報告書 野心的なEUタクソノミーに反対する日本の産業界のロビー活動

2020年4月2日

InfluenceMap報告書

野心的なEUタクソノミーに反対する日本の産業界のロビー活動

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欧州連合(EU)はサステナブル・ファイナンスに関する規制の導入に向けて動き出した。これは金融セクターから気候変動に関する目標の必要性を駆り立てられたことがきっかけだ。EUタクソノミーの重要な部分は、どの経済活動が「グリーン」と定義されるかである。2019年12月18日にタクソノミーに関する最初の決定が下された。強化される開示義務とタクソノミーに準拠した企業行動を求める圧力は、金融・産業界に大いに影響を与えると考えられている。タクソノミーでは気候変動問題に重点を置いているが、今後は他の環境問題もカバーする予定である。タクソノミーが産業界に与える影響を考慮し、2018年から2019年にかけては多くの企業のロビイストが自社への影響を最小限にするため、タクソノミーの作成プロセスに対してロビー活動を行った。

2019年12月に発表されたInfluenceMap報告書The EU’s Sustainable Finance Taxonomyは、金融や産業界の利害を代表するEUの業界団体の規制プロセスに対する強力なロビー活動を追った。このリサーチは、GuardianやFT 、 Politico等の ヨーロッパ、並びに国際的なメディアに取り上げられた。以下のブリーフィングは、日本の業界団体がどのようにタクソノミー作成のプロセスにロビー活動を行ったか、またヨーロッパの金融機関と比較しどのような立場をとっていたかを考察する。

• 大半のロビー活動はEU域内からであったが、国際ビジネスを中心とした業界団体はEUタクソノミーの国際的な影響への懸念を欧州委員会に働きかけた。 国際金融業界団体のInstitute of International Finance(IIF)は「水力発電とガス燃焼による電力生産においての基準が野心的で非現実的である」としてタクソノミーに対し反対をした。

• 日本の産業界に影響力を持つ日本経済団体連合会(経団連)は日本の業界団体を率いて先進的なタクソノミーに反対の立場をとり、欧州委員会に働きかけた。InfluenceMapが分析した2019年9月に発表された経団連による提言書では、タクソノミーは「国際金融市場の不安定化を招く」とし、タクソノミーの他の地域への拡大は「民主導の非連続なイノベーション」を阻害すると論じていた。InfluenceMapの評価では、経団連は(EU並びに他の地域を含め)野心的なタクソノミーに最も反対している業界団体である。

• タクソノミーはEU域外諸国の意見を反映していないと経団連は述べ、タクソノミーの国際的な波及に懸念を示した。さらに、ブラウン・タクソノミーは特定のセクターに評判リスクを負わせるとし、グリーン・タクソノミーが「化石燃料の利用に象徴される特定の経済活動・技術・製品の利用を恣意的に排除」してはならないと述べている。

• 経団連のロビー活動の立場は、タクソノミー賛成派のAviva やBNP Paribasといったヨーロッパの金融機関と反している。これらの金融機関は、タクソノミーはサステナブルな投資に対しての資本の動きをスムーズにするとし、共通の基準を持つことを常に支持してきた。Aviva および Natixisは、ネガティブな影響を持つ活動を定義する「ブラウン・タクソノミー」を設定することの重要さを強調している。2020年3月に発表されたEUタクソノミーの最終報告書では、欧州委員会のテクニカル・エキスパート・グループ(TEG)が低炭素社会移行のためにブラウン・タクソノミーを定義することの重要さを繰り返し強調している。

• 経団連に加え、他7つの日本の業界団体(在欧日系ビジネス協議会を除きすべて経団連所属団体)が弱いタクソノミーを求めロビー活動を行っていたことがInfluenceMapの分析により判明している。

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EUタクソノミーはヨーロッパのサステナブル・ファイナンス政策の礎石であり、気候変動対策への資本の流れに大きな影響を与えることでしょう。 このタクソノミーは、パリ協定の目標との整合性を保った、綿密に開発された分類法です。私たちは、調和を築く基礎として、EUタクソノミーの使用を支持します。 また、国際的なタクソノミー間で共通デザインをとることは、タクソノミー間の相互認識を可能にし、経済活動および投資の環境パフォーマンスに関しての市場の理解に促すものとなります。

Helena Vines Fiestas